「手術のあとが盛り上がって赤くなってきた」「虫刺されの跡がずっとかゆくて、触ると固い」
──それは、ケロイドや肥厚性瘢痕（ひこうせいはんこん）と呼ばれる状態かもしれません。

通常の傷は、時間とともに目立たなくなっていきますが、体質や部位、傷の治り方によっては、赤く盛り上がった傷あとができ、長期間にわたってかゆみや痛みを伴うことがあります。

当院では、形成外科専門医として、見た目と機能面の両方に配慮しながら、再発リスクを抑えた治療方針をご提案しています。

ケロイド・肥厚性瘢痕の原因

まずはこの2つの違いと、起こるメカニズムを簡単にご説明します。

肥厚性瘢痕とは

• 傷が治る過程で、皮膚の中でコラーゲンが過剰に増殖してしまうことによって、赤く・硬く・盛り上がった状態になる傷あとです。

• 通常は傷の範囲内にとどまり、時間とともに徐々に落ち着いてくることが多いです。

ケロイドとは

• 肥厚性瘢痕よりもさらに広がりやすく、傷の範囲を超えて盛り上がってしまう状態です。

• かゆみや痛みが強く、再発しやすいのが特徴です。

• 体質的な要素も強く、同じような傷でもケロイドになりやすい人とそうでない人がいます。

主な原因・誘因

• 手術・ケガ・注射・ピアス・虫刺され・ニキビ跡など

• 摩擦や圧迫、強い日焼けなどの刺激

• 胸や肩、耳たぶなどは特にできやすい部位です

放置するとどうなる？ケロイド・肥厚性瘢痕の経過

• かゆみや痛みが長引く

• 衣類と擦れることでさらに刺激となり悪化

• 関節周囲にできると、動かしにくさや引きつれ

• 見た目のコンプレックスによる精神的ストレス

• 無理に押しつぶす・削るなどの処置で、より硬く悪化

このように、単なる傷あととは異なる状態であるため、医療機関での専門的な対応が必要です。

ケロイド・肥厚性瘢痕の治療法について

当院では、症状の程度や部位、これまでの治療歴を踏まえて、患者さまに合わせた治療をご提案しています。

保存的治療（手術以外の治療）

• ステロイド外用薬やテープによる炎症の抑制

• ステロイド局所注射（トリアムシノロン注射）：赤みや盛り上がりを軽減

• シリコンゲルシート：日常的に貼ることで予防・軽減

• 内服薬（抗アレルギー薬など）によるかゆみの緩和

手術療法（再発リスクを考慮）

• 肥厚性瘢痕で、一定期間経過後に切除可能と判断した場合、手術で傷あとを改善することがあります

• 再発防止のため、術後に注射や圧迫療法を継続

ケロイド・肥厚性瘢痕についてのよくある質問

Q1. ケロイドか肥厚性瘢痕か、自分では区別がつきません…

A1. 専門医が傷の部位・経過・症状の強さなどから総合的に判断いたします。心配な方は、お早めにご相談ください。

Q2. ステロイド注射は痛いですか？

A2. 注射は細い針で行いますが、痛みを伴う場合があります。ただし、症状が強い部位では高い効果が期待できるため、必要に応じて説明のうえ実施します。

Q3. 完全に元の皮膚のように戻りますか？

A3. 完全に傷あとをゼロにするのは難しいですが、赤みや盛り上がり、かゆみなどを目立たなくし、生活上の不快感を軽減することが可能です。

院長より

ケロイドや肥厚性瘢痕は、目立つ・かゆい・痛い・治らない…といった悩みが重なり、身体的にも精神的にも大きな負担になることが少なくありません。

当院では、形成外科専門医としての経験を活かし、患者さんお一人おひとりの傷あとと向き合い、生活の質（QOL）の向上につながるような治療を心がけています。

「もう何年も治っていない」「見た目が気になるけれど、どうすればいいか分からない」
そんなときは、どうぞ私たちにご相談ください。